最近の全日本合唱コンクール<一般の部・Aグループ>でトップ争いを演じている東西2つの合唱団のジョイント・コンサートが昨日、5月4日(祝)に大阪のいずみホールで開かれた。
今や「日本一」の”コンビーニ・ディ・コリスタ”を東京から招き、地元関西の奈良県を拠点とする”クール・シェンヌ”がホスト役を務める、という感じ。僕も合唱ファンの一員として事前にチケットを入手して奈良県内から馳せ参じた。座席指定を受け会場に入ってみると、中央の招待席は合唱連盟関係のお歴々だ。奈良でよく見る顔も…
僕の席はやや後ろの方の左寄り。まずまずの席だが周りの面々が「濃い」。前の列は以前、”シェンヌ”のステージに立っていた女性陣。後ろの列には関西の某合唱団の若手指揮者とお仲間たち。僕の両隣も熱心な合唱ファンというのがありあり。そりゃそうだろう、前売り券で2500円。そんじょそこらのママさんコーラスの発表会とはわけが違う。
さて、”シェンヌ”単独の第1ステージが厳かに始まる。女性が前(13名)、男性が後ろ(14名)のオーダーだが、女声がまた若返ったようだ。出だしはC.V.スタンフォードのモテット。いつもの上西ワールドの始まりだ。続いてブラームスのピアノ伴奏の入った「4つの四重奏曲」作品92。ちょっと変わった選曲だ。数年前にこの中から僕も歌ったことがあるが、決して易しい曲ではない。シェンヌは浦史子さんの伴奏に合わせて難無く歌いきる。ピッチはあくまでも正確である。個人的趣向を述べれば、とくに「晩秋」などは色艶のある声がほしいところだが、それは上西一郎氏の求めるところではないのだろう。最後はヴェルディの "Pater noster" という聖歌。初めて聴く曲だが、イタリア語で熱く盛り上がる。シェンヌの新しい取り組みのように思えた。
短い休憩後の第2ステージは”コンビニ”のアラカルト。力強い宗教曲 "Laudate Dominum"(Vagn Holmboe 作曲)に始まり、アンデルセンの詩(デンマーク語?)による「たまごとおばさん」(Fuzzy作曲)という楽しい曲。松下耕作曲の「五木の子守歌」と島唄風の「南海にて」と続き、僕にとっては初めて聴く曲の新鮮さと歌う喜びにあふれた動きのあるステージに感動する。圧巻は聴きなじみのある”Ev'ry Time I Feel the Spirit" を振りをつけながら歌う(男声は全員サングラス着用)姿。サ-ビス精神旺盛というか、レパートリーの広さに恐れ入る。ベース・ソロも立派だったが、合唱も30名弱と”シェンヌ”と変わらない陣容なのに個々の歌う力が凄いんでしょうね。荒さも時折顔を覗かせるが、抑制しすぎない人間の声の魅力を感じた。
最後の合同ステージについては詳細を省略。二人の指揮者がそれそれ「持ち歌」を指揮したわけだが、松村努氏指揮の日本語の曲「泉のうた」(信長貴富・木島始)、「前へ」(佐藤賢太郎)は言葉が心にしみた。もちろん Lauridsen の "O Magnum Mysterium" のハーモニーが素敵にホール中に響いたことはいうまでもない。
Reinbergerのミサの後、アンコールが続き、木下牧子の「夢見たものは」でお開きとなった。メンバーがステージ上に拡がったことと、上西氏の叩くピアノの一音で察しはついたけれども… やっぱりこの曲ですね。会場中の聴衆が満足したステージであったろう。最後の一人がステージから姿を消すまで温かい拍手が続いた。外に出ればまだ曇り空ではあったが、僕も幸せな気分でいずみホールを後にした。
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