さて、地下鉄副都心線の池袋駅を出て(案内板をしっかり見てから)地下道を通り地上に出た。外は晴れていて寒くはない。なんとなくホールの場所は分かったので、コンビニに立ち寄りミネラルウォーターを買っておく。バス乗り場みたいなロータリーがあって、その先が東京芸術劇場だ。後で知ったのだが、その先に「西口公園」、さらに東武百貨店の入った駅ビルがある。
ホールの建物に入ると広い空間になっていて、その大きさに驚いたのだが、その日の行動を共にするT君が待ってくれていた。9:45開場だが既に席まで確認したあと僕を迎えに出てくれたらしい。多くの聴衆が入場のためエスカレーターを乗り継ぎ大ホールの入り口に向かう。T君のアドバイスで大きいカバンをクロークに預ける。さっき買った水も「水飲み場がある」とのことで、カバンに入れたまま預けた。都内に勤務するT君はオーケストラを聴いたり、この会場を熟知しているようだ。彼がとってくれた席は1階席前から9列目の中央。いわゆる(アメリカではそういっていた)オーケストラ席のど真ん中だ。
10時半に開会。主催者挨拶があり、2階席に陣取った審査員(※)の紹介がある。ただ、席がど真ん中過ぎて、後ろを振り返っても審査員の顔が見えない(笑)。まもなくコンクールの演奏が始まった。トップは楽しみにしていた関西支部代表、同志社グリークラブ。課題曲は日本語のM3『葉月のお月』(阪田寛夫詩/大中恩曲「わが歳月」から)を選択。関西弁の詩のアカペラ曲だ。聴いているといい感じだし、このホールの響きがすごい。心地よい残響もある。自由曲は信長貴富曲『独唱』と田中達也曲『音速平和』でピアノ伴奏付き… 個人的には好みの曲調ではない。まずまずの出来だと思ったが、翌朝知った結果は銅賞。残念でした。
そのあと都留文科大学合唱団、東工大コール・クライネスと常連組が続き、大合唱の響きを堪能した。とくにクライネスは課題曲はG2: Poulenc の Salve Regina 自由曲も「人間の顔」から "I. De tout les printemps du monde" "VIII. Liberté" を聴かせてくれた。第2日にも Poulenc セットで演奏してくれた団体があったが、今年は課題曲にルネサンスの Orlande de Lassus と 近代の Fransis Poulenc の作品が外国曲に選ばれ、プーランク好きの僕としては幸せな二日間になった。
大学ユースの中では埼玉県の Chor OBANDES が気になる演奏をした。"Salve Regina" と千原英喜曲の『アヴェ・マリア』(「東方のマリア」の終曲)だったが、バランスの良い40名程度の混声合唱だと思った。結果は銀賞でしたが…
ディフェンディング・チャンピオンの関西学院グリークラブは「守りの姿勢」が色濃く感じられた。課題曲はM2 "Seigneur, je vous en prie" 自由曲は Bob Chilcott 作曲の英語曲だったが、まとめようとして大人しすぎる演奏ではなかったか? 結果は金賞ながら3位と残念な結果。1位は都留、2位は次にあげる名古屋大学のコール・グラッツェだった。
記録を見ると名大グラッツェは昨年も金賞2位。松下耕の「日本民謡」をやったんだな。ほとんど覚えていない。今年の自由曲はEric Whitacre 作曲の "Leonard Dreams of His Flying Machine"。130人以上の大合唱だがホールがよく鳴って不快感はない。次の九大混声合唱団も金賞でした。課題曲はG3『子どもは……』(谷川俊太郎/三善晃)。この曲、詩・曲ともに力が感じられる。自由曲は信長貴富の「春と修羅」より [II] で 詩は宮沢賢治。これにも力がある。
関学グリーの前に歌った男声合唱の北海道大学合唱団も好きな感じだったが銀賞。なかなか金賞は取れないですね。課題曲はプーランク、自由曲は池澤夏樹作曲・鈴木輝昭作曲、合唱とピアノのための「満天の感情」から…
(※)今回の審査員長は音楽学者の礒山雅(いそやまただし)先生。最近、NHK-Fmの朝の番組『古楽の楽しみ』を良く聴いているが、丁寧な解説をされている。審査員には作曲家の新見徳英氏、合唱指揮者の栗山文昭氏も名を連ねていて、総勢9名。
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