久々に器楽の演奏を聴きに行った。題して「総象牙のリュート!」佐藤豊彦・佐藤美紀「2台のバロックリュートによるドイツ音楽」というもの。
先月に毎週水曜日の練習会場「奈良市グリーンホール」のちらしラックにあった目を引く赤と黒のチラシを見たのがきっかけだ。
聴きに行くかどうかしばらく保留にしていたのだが、3月20日は三連休の中日で練習予定も入っていなかったので一週間ほど前に予約の電話を入れた。定員40名とのことだが、まだ席は空いていた。会場は奈良市内の「佐保山茶論」というところで、奈良高校の近くだが、あまり馴染みのないエリアだ。ネットで調べると近くに「春日野荘」があり、30年以上前に合唱団のメンバーの結婚披露宴に歌いに行ったことを思い出した。駐車スペースも確保しているということなので、カーナビを頼りに自家用車で行くことにした。
昼食後、家を出て約30分で到着。会場近くは狭い道があったけど、事前に調べておいたので、わりとスムーズ。早く着きすぎたので周辺を散策し、奈良高校の前まで行ったが、丘の上にあるんですね。グラウンドからたぶん野球部の練習する金属バットの音やかけ声が辺りに響いていた・・・
演奏会場は三角屋根の小さなホールという感じ。2階のバルコニー席みたいなのを入れて定員40名なのでステージは目の前で、1階の2列目の真ん中に座った。最初はヴァイス(Weiss)という作曲家の「デュエット」in G-Dur. その後、Suite in d-moll だが、曲の途中で中断。調弦を間違ったということだ。半音階のところは弦で調整するという。この組曲では「シチリアーナ」がすてきだと思った。哀愁漂うのが良い。そしてメヌエット、ジーグで終わる。
チラシのリュートのボディーは象牙造り。黒く見えている線は一本ではなく二本であり、その間は象牙の白。白黒のコントラストを和らげているという。音楽には直接関係ないが、丁寧な楽器造りの職人技を物語っている。そして、調弦に苦労するという天然の(羊の腸を使った)ガット弦を使用する演奏家は今や希少だそうだ。そういう意味では、そんなリュートのデュオを聴くという貴重な体験をした。
演奏会後半はテレマンの作品。チラシにあるコリニアーニなる作曲家もたぶんテレマンであるという。そして最後は再びヴァイスの「シャコンヌ」。アンコール曲もヴァイスだった。変な話だが、リュートの音を聴いて、懐かしい気分になった。というのは、僕が十代の頃、クラシック音楽を聴き始めたとき、リュートやチェンバロのか細い優しい音色が好きだったのだ。偶然知った演奏会だったが、この奈良の佐保山でのひとときは幸福な気分に浸れるものであった。また機会があれば訪れたいと思う。
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