本日の朝刊一面に丸谷才一氏の訃報が載っていた。10月13日の朝、心不全のため87歳で亡くなったとのこと。
僕のブログでも丸谷さんの長編小説について二度記事を書いた。紫式部の「源氏物語」について自らの見解を小説の中で展開した『輝く日の宮』~奥の細道を松尾芭蕉が書いた動機にも言及、一方、英文学者らしく、イギリスの古い詩に絡ませて主人公の愛人の物語を展開していた。(2011.4.13付記事)
もう一つは『持ち重りする薔薇の花』という昨年発表の長編小説で、世界的に活躍する日本人の弦楽四重奏団を登場させ、音楽についてもその知識を開陳している。(2012.7.7付記事) また、『輝く日の宮』と同様、男女の色恋やビジネスに関わる話を織り交ぜるなど、読者に対してサービス精神旺盛といえよう。たしか自ら「娯楽小説」家と称していたらしい。
ユーモアたっぷり(イギリス流という)の人だったようで、その辺も新聞に載っていたし、指揮者の小澤征爾も桐朋で英語を教わった時の想い出を語っていた。
また伝統的な旧仮名遣いを自由に操る才人を亡くしたのは残念なことである。その文体は敬愛する村上春樹とは対極にあったようにも思えるが、その実、二人とも英文学から強い影響を受け(翻訳を積極的に行っていたし)自らの文体を築きあげたのではないかと思う。(※)
これからまた丸谷氏の著作を読む機会が増えるかもしれないなぁ、と思っている。
(※)あとで14日付の日経新聞の記事を読んだり、ネット上のブログ記事を見たりしたが、丸谷才一氏は村上春樹のデビューの頃からムラカミの文章に何か感じるところがあり、『風の歌を聴け』の群像新人賞受賞でも選考者として評価していたようですね。その後の『世界の終りとハ-ドボイルド・ワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』の受賞でも… なるほど。
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