12月のある平日に久々に地元の図書館に立ち寄った。『蜜蜂と遠雷』を読了したので、次に何か、と思ったのだ。たまたま雑誌『文學界』のバックナンバー、といっても2019年12月号に村上春樹の短編小説が掲載されているのを見つけた! なんとまぁ、連作短編「一人称単数」その6として『謝肉祭(Carnival)』というタイトル。その6、というからには連作の前作があるはずなので、バックナンバーの棚を漁り、2019年8月号にその4と5が同時掲載されているのを発見! それ以前のものは棚では見つからなかったが、他の作家の中編小説連載とあわせて計5冊を借りた。年末年始の休館があるので3週間の長期貸出し。年明けの1月上旬に返却することになる。
『謝肉祭』とはロベルト・シューマンのピアノ曲、作品9のタイトルである。そう来たか! この前の長編小説はモーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』の騎士団長がテーマだったし、その前の中編小説はリストの『巡礼の年』が絡んでいたよね。今回はストレートに「ピアノ音楽の中からたった一曲だけ残すとしたら」という会話から選ばれたのがこれだ。「僕」との会話の相手は「F*」とされる容貌の醜い女性。彼女は「これまで僕が知り合った中でもっとも醜い女性だった」と書かれる。うーむ、書き出しからすごいなぁ…
話は展開して行き、村上春樹らしく意外な結末を迎える。あいかわらず上手いなぁ… でもちょっと「ブス」みたいなことをしつこく強調し過ぎなんじゃないか? という気がしなくもない。
ただ、僕はシューマンの『謝肉祭』を Spotify や YouTube で検索し、スマホで聴いているのだ。今まであまり知らなかった曲だが、西宮市民会館アミティのコンサートである女性ピアニストが何曲か弾くのを聴いて、新鮮に感じた覚えがある。第1曲が「前口上」、第12曲は「ショパン」と名付けられている。
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