11月に映画『蜜蜂と遠雷』を観たことは既に書いた。国際ピアノコンクールを舞台にした人間模様のストーリーが面白く、映画館で聴くピアノ音楽は音響的に迫力があった。原作はおととしの直木賞と本屋大賞をダブル受賞したとか…
読書家の友人M君がその原作本を貸してくれた。幻冬舎文庫で上下2巻。まとまった読書タイムが取れないので読み始めから一週間ほどかかって読了したが、それこそ時間さえあれば、この分量を一気に読み通してしまいそうな面白さだ。たぶん原作を読んでから映画を見たほうが面白さ倍増だろうな。もちろん映画化にあたって割愛された場面も多々あるし、変更されたシチュエーションもあったと思うが…
原作では養蜂家の息子、風間 塵の描かれ方がさらにすごいと感じた。小説の冒頭、パリでのオーディションのシーン。そして日本に来て音大のピアノ練習室に忍び込むシーンでは彼の超人的な聴力が描かれている。映画ではチャーミングな新人俳優が抜擢されたようだが… 僕はピアノ弾きではないし、興味あるピアノ音楽もモーツァルトやショパン程度だったから、この小説に出てくる曲をYouTubeや Spotify で聴いて、へぇー、こんな音楽もあったんだとヴァリエーションを広げることができた。たとえばバラキレフの「イスメライ」なんて名前も聴いたことなかったし。
高島明石も映画での描かれ方が印象的だったけど、小説でも概ねそのような書かれ方かな?と思いきや少し違う場面も… 映画では古民家のような自宅の土間でグランド・ピアノを弾いていたが、原作では防音ルームのある一戸建だ。そりゃそうだよね、「生活者の音楽」を表現するための演出だろうか? 狭い防音ルームのアップライトピアノのほうがよっぽど生活者らしいと思うが…
メインの主人公たち、栄伝亜夜とマサル・カルロス・レヴィ・アナトールの運命的な出会いと再会は小説ならでは、と言っていいだろう。天才肌で20歳になっても天然さを保つヒロインと、日本で亜夜とピアノに出会い海外で音楽性を開花させた混血児(母親がペルーの日系3世という設定)のヒーロー。映画では描かれていないが、二人ともクラシックピアノ以外の楽器も演奏する音楽好きだ。ただのピアノ馬鹿(失礼!)じゃないのがいいよね! コンクールで競争相手の演奏も聴いて音楽を楽しみたい、という表現は素敵だ。
しばらく読書から遠ざかっていたが、これをきっかけに僕も小説への回帰となりそうだ。先日図書館で文芸雑誌のバックナンバーを何冊か借りてきた。この話は次回にしよう…
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