この日曜日の夜、BS朝日で「五嶋みどりがバッハを弾いた夏・2012」という番組が放映された。この日は家で夕方6時頃から冷やの日本酒とアジの開きをスタートに調子よく飲んで、夜8時頃にはすっかりできあがっていた。
なので、録画していたものを今晩見たのだが…
彼女(五嶋みどり)は凄く地味に映っていて、彼女も世間が超一流ヴァイオリニストに期待する姿と自分自身がなりたいと思う理想にギャップがあって悩んだ(拒食症にもなったそうだ)時期があったとインタヴューで語っていた。そして今から十数年前に自らの理想の姿を貫くことでヴァイオリニストの道を続けると決意したそうだ。彼女の姿、語り方にはそのようなきっぱりと決意した人にしかないような力があった、
デビューして30年だそうだ。その記念としてこの夏、長崎五島の離島の教会から京都・西本願寺の普段は非公開の畳の広間、奥州平泉の中尊寺金色堂などを経て、函館のカトリック元町教会で終える日本全国縦断ツアーを行った。演奏するのはJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ。彼女がいくら勉強してもしたりないという古典的バイブル。雨が降るような湿気の多い中、しかもオープンな演奏会場でも彼女自身は気にならないと言っていた。
彼女はツアー移動中は高価なヴァイオリンの入ったケースを背負ってバスや電車などの公共交通機関を使い、宿泊はビジネスホテル、コインランドリーで自分で洗濯もする。それが彼女が選んだ生き方で、一流演奏家であることと何の関係も無いという。それを言うのは易しいけど、実行に移すのはなかなか難しかろう。そして、アメリカ・カリフォルニアで大学の教授を務め、日本での演奏ツアー中もストイックな仕事ぶり。ほとんどCDでしか彼女の演奏を知らない僕には意外な姿だった。
思い出したのは今から25年前にアメリカのニュージャージー州アトランティックシティーのカジノホテルのトイレで読んだReader’s Digest誌。語学研修の名目でオレゴン州とワシントン州の大学内で半年間の英語学習の後、1987年3月からNJ州の販売子会社での業務研修ということになったのだが、決算が一段落した休日に日本人駐在員のS先輩が遊びに連れ出してくれたのだ。スロットマシーンなんかやっているうちにお腹が痛くなってトイレに駆け込んだのだが、その中に置いてあったのがReader’s Digestだった。そこに日本人ヴァイオリニストMIDORIの記事が書かれていたのだが、何故だか?すらすら読めた。小学校の教科書に載ったということなので、小学生向けの英語だったからかな…?
いま思えば、それが「タングルウッドの奇跡」と呼ばれる出来事だった。僕が記事を読んだ前年の1986年7月のタングルウッド音楽祭での出来事。当時MIDORIは14歳の子供。インターネットで当時の映像が見られるが、これは凄いですね。演奏終了後、自作曲の指揮をしていたレナード・バーンスタインが感激してMIDORIを抱きしめる姿が映っている。
そんな彼女も立派な大人になってもうすぐ41歳。当時20歳代だった僕ももう54歳になっちゃんたんだけどね…
くれどさんと小生がニュージャージーにいた90年代の前半、彼女は時々NYフィルと共演していましたが、そのうちにあまり表に出なくなっていましたね。その後、彼女の演奏を聴くことはありませんでしたが、時折、演奏活動とともに営む地道な社会活動について耳にしていました。今度来日(?)した際にはぜひ聞いてみたいですね。
投稿情報: 平田陽一 | 2012年9 月26日 (水) 22:36
MIDORIは20歳にして「みどり教育財団」を立ち上げたというからすごいですね。その後も大学で心理学を専攻して修士号まで持っているというから立派!
残念ながら彼女の演奏は生で聴いたことがないけど、機会があれば聴いてみたいですね。もちろんCDは何枚か持っているのですが…
投稿情報: inukshuk | 2012年9 月27日 (木) 12:13