『それから』の読後すぐに三部作の最後の『門』に取りかかったが、3日ほどで読み終えてしまった。
書き様は前の2作品に比べて淡々としているように思える。時系列通りの書き順ではないのだが、よく考えられた末の説明口調というか… 主人公の「宗助」とその妻「御米(およね)」のひっそりとした生活風景が中心に描かれ、その周りの叔母の一家や実弟、家主の一家の様子が描かれストーリーが展開するのだが、大きなクライマックスが感じられないなぁ。エピソードとして宗助が歯医者に見てもらうシーンあり、御米が往診を受ける場面もある。有名な鎌倉の禅寺の山門をくぐる話もあるのだが、エンディングは素っ気ない。アンチ・クライマックス。
これが漱石の名作? これが後に『こころ』に展開するんでしたっけ? 『それから』の三千代と同じく『門』の御米も病弱の様子に描かれているし、ちょっと暗いイメージが漂う作品ですよね。宗助にしても、すっきりしないというか、漱石の神経症的な面が出ているのか? それを自分で客観的に見ているのか? 鎌倉行きの前に「少し脳が悪いから、一週間ほど役所を休んで遊んでくるよ」と言うのが印象的だ。
主人公たちが世間から疎外されたように生きているのは、宗助が学友安井の恋人である御米を奪い取って一緒になったから。しかも彼は京都大学の学生であったが、この事件のため学業を断念してしまった。なんて今の若い人には「ちんぷんかんぷん」の世界でしょうね。しかもその後も安井の影に怯えている…
ところで僕は20歳代後半に同じサークルで出会った女性と結婚した。お互い過去にサークル内の別の相手とつき合っていたが、略奪したとかいうスキャンダル的なものもなく、その後平穏?に暮らしております。まあ、自分の親に不義理なこともし、一度勤め先を変わったけれども、波瀾万丈というほど大した人生ではないなぁ。それでも、自分ではこれまでの様々な転機にドキドキしながら生きてきたんだけど…
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