代助もついにやったなぁ。優柔不断の男がついに行動に出た。三千代に会いに亭主のいない折りを見計らって訪ねていったり、しまいには車をやって自分の家に来させたりしてしまう。後戻りできないところまで自分を追いつめた後は加速がついてくる。三千代の夫、平岡には自分が彼女を「愛している」と言い、彼女を「くれ」と言ってのけるのだ。そして、実家が薦める「父が恩義を感じている筋の娘」との縁談をついにきっぱりと断ってしまい、実家からの経済的援助をこの先は受けられないのが決定的となる…
ふたりのこれからについて、三千代に「漂泊でも好いわ。死ねと仰れば死ぬわ」と言わしめるのだ。
凄いなぁ。百年前の朝日新聞に連載された小説でしょう。不倫といっても精神的なものだが、その当時としては一昔前(1995年頃)に日本経済新聞に連載された渡辺淳一の『失楽園』ぐらい話題になったのでは?と勝手に想像している。この頃、僕はアメリカの会社に出向しており、衛星版の『日経』が日本人駐在員の家庭で回し読みされたものだ。
さて、『それから』に戻って、この小説では主人公「代助」の頭の中で考えていることや、その行動の描写もさることながら、嫂(あによめ)「梅子」との対話によって実家との関係が良く描かれているし、彼女が物語のなかで重要な役割を果たしていますねぇ。漱石ってこのような女性の描き方がうまいなぁ、って感じます。さばさばした近代的な女性が好きだったんでしょうか? エンディングは代助青年の頭脳が燃え尽きてしまうイメージですなぁ。強烈です。
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