昨日は~会社の事情がいろいろあり~仕事が休みだったので、昼間から街に出てぶらぶらしていたのだが、目に付いた映画館で山田洋次監督の「おとうと」を見た。たしか、ことしの初めに公開され、TVコマーシャルで吉永小百合の弟役の笑福亭鶴瓶が結婚披露宴のテーブルをひっくり返すシーンが脳裏に焼きついている。
さて、映画を観たのは地方都市のいわゆる名画座。上映時間になって入ったのは20名ほどであったろうか。平日の昼間とあって客のほとんどはシニアの方々であったが、僕と同年代らしき中年男も中にはいた。ビニール袋の中にはビールとおつまみ??
映画そのものはちょっと誇張されすぎた「不出来な弟」の姿をコミカルに山田洋次が描くのだが、最初の方からなぜか涙腺が緩みがちになる。もちろんラストシーンが近付くと、ポケットからハンカチを取り出したまま、ときどき目尻に当ててしまうのだが・・・ 身寄りのない人のための「ホスピス」が出てきて、「あぁ、そんな施設もこの世の中にはあるのだ」と感心する。役者の演じ方があまりにドラマ化されて、しらっとしたいところだが、その中で吉永小百合演じる小さな薬局の未亡人店主のひたむきな生きる姿に、口では絶縁するといっても独り身の弟の健康や生活を心配する姿に僕の魂は無力になる。医者の夫と離婚し実家に帰ってきてしまう薬局の娘「小春」役の蒼井優、ホスピスで「現実を受け入れ、明るく淡々と」といった感じの石田ゆり子の演技にも好感が持てた。たまには、こうやって涙を自然に静かに体外に出すのも大事なことかもしれない。
それと、ワインの話。小春の結婚式の前夜~近所の工務店員と再婚するので二度あるのだが~家庭でのお祝いの夕食の前に、ボルドーらしき赤ワインのグラスを若くして亡くなったご主人(良いお医者さんだったという設定)の遺影の前に供えるのが印象的だった。
映画を観たあと、大阪の街で大学時代の仲間と旨いものを食べ、酒を酌み交わした。メーカー、公務員、金融関係、それぞれの道に進み、いろんな問題を抱えながらもまじめに働いている仲間だ。趣味を一生懸命に続けている奴だっている。我々は我々の現実の世界で幸せなひと時を共有できた気がした。
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