村上春樹の短編集。昨年4月の刊行だが、あえて新刊を買わずにいた。最近ではこの短編集のことをほとんど忘れていたのだけど、先日図書館に別の本を借りに行ったときについでに借りてきた。
めずらしく著者の「まえがき」がついている。今回は「業務報告」的に記したとのこと。「文藝春秋」に掲載されたものを中心にしているとのとこだが、雑誌掲載時から一部変更したことにも触れている。
『ドライブ・マイ・カー』がこの中では一番好きかな? 地名を変更した理由は読んでみればすぐわかるのだが、ストーリーは面白い。北海道から東京に出てきた20代の女性が、訳があって運転手を探していた舞台俳優の専属ドライバーになる。車は彼のサーブ900コンバーティブル。彼が車中で語る話~癌で死んだ妻と寝ていた男との交友~が中心になる大人の物語。
次の『イエスタデイ』は後天的に大阪弁をマスターした田園調布に住む予備校生の話。関西人の僕にも笑える話だ。(僕はカメレオン的に状況に応じて関西弁と標準語を使い分けることができるが・・・) 奇想天外なストーリーだが、その男のガールフレンドだった女性と十数年後に偶然会った、という後日譚が村上らしい一篇。
『独立器官』は失恋の末に餓死してしまう美容整形外科医の話。後半では医師の秘書のようなことをしていた青年の語りが中心になる。村上作品らしい登場人物だ。
『シェエラザード』は「MONKEY」という雑誌のために書かれた作品とのこと。女の語る高校生時代のストーリーはかつて聴いた(読んだ)ことのあるような奇妙な感覚に襲われるものだった。なんでそんな気がしたのだろう?
『木野』はちょっと難しい。村上も「ずいぶん推敲を重ね、仕上げるのが難しかった」と書いているが、全体に暗い印象を受ける作品である。
ことしもノーベル文学賞は外国の作家が取った。ここ数年、メディアが村上受賞待望記事を書き、TVでも一部ハルキストの様子を放映しているが、僕自身は「別にノーベル賞なんて受賞しなくてええんやないの」という気持ちである。村上春樹自身も「批評家や選考委員よりも世界中の読者のほうが大事」という趣旨の発言をしているが、それは本心だと思う。
ところで今日からプロ野球の日本シリーズが始まるようだが、スワローズファンのハルキはまさか神宮球場に現れたりしないのかな?
最近のコメント