奈良市内に「大和文華館」という小さな美術館があるのだが、今年初めに会員になった。昨年、酒井抱一の特別展があり、前期後期の二回見に行ったし、年間3~4度美術鑑賞に行くならお得かな、という気がしたものだから。車で行っても駐車場が無料で結構広く、敷地内の植物が四季折々楽しめる。
そして年に数回「華コンサート」として館内のホールで無料で音楽を聴ける企画がある。これを知ったのは昨年秋、酒井抱一展に車で行ったら駐車場が異常に混んでいて、駐車スペース外に縦列駐車したことがあった。このときちょうどチェンバロの中野振一郎のコンサートが開かれていたのだ。
会員になったので会報・展覧会情報が自宅に送られてくるのだが、それでこの春の「春風に揺れる菊桃」と題するコンサートを知った。出演者はオペラの本場イタリアを中心に活躍するソプラノの Fernanda Costa さんとテノールの古橋郷平(こはしごうへい)さん。
この日の展示は特別企画展「風俗画と物語絵」で国宝「松浦屏風」(あとで聞いたが、毎年この春の季節に展示するそうだ)や俵屋宗達筆と伝わる伊勢物語図絵、数々の源氏物語図屏風(個人蔵もあった)を鑑賞したあとコンサートの時間まで庭を散策した。枝垂れ桜もほとんど散っていたが、キクモモというのがきれいに咲いていた。そうか、これが今回のコンサートのお題になっている。あいにく曇り空で肌寒い天候ではあったが・・・
開場時間前に館内に再び入ると結構な行列ができていた。整理券はもらっていたのだが150名限定とのこと。周りの会話を聞いているとおなじみさんも多いようだ。年度初めということで館長の挨拶などあったが、いよいよテノールの古橋さんが登場し関西弁で自己紹介し歌い始めると・・・
さすがプロである、そんなに音響が良いとも思えない講堂に声がビンビン響き渡る。曲順・曲名は忘れたが、トスティの歌曲や「初恋」など日本の歌曲も披露してくれた。「見上げてごらん夜の星を」ではちょっととちった??感じ。僕らの合唱では歌詞が聞き取れない、なんて言われたりするが、独唱で歌詞がモゴモゴに聞こえると「ウン?」てなことになる。でも歌声はすばらしい!!
そしてソプラノの Fernanda Costa さん。じつはリハーサルの声が展示室まで聞こえてきていたのだが圧巻はオペラの名曲の中から「トスカ」の "Vissi d'arte"「歌に生き、恋に生き」。最高音は何だろう? 息づかいが聞こえる距離で世界的ソプラノ歌手の生演奏を聴かせてもらった。顔はやや上向き加減で体をやや斜めに向けたり、本場の舞台でもそうやって歌っているんだろうなぁ。
第一部のフィナーレは「椿姫」第1幕からのデュエット。アルフレードとの出会いの場面ということだったか? もうこれで胸一杯になって、しかしお腹が空いていたので、コンサートは休憩を挟んで第二部もあるとのことだったが大和文華館をあとにした。
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