出版されて35年も経つ村上春樹のデビュー作をまた読んだ。きっかけは先日の日曜日に京都に電車で出かけるとき、本棚から加藤典洋氏の『村上春樹 イエローページⅠ』(幻冬舎文庫)をつかんでカバンに入れたこと。電車の中で冒頭から読んでいて原作をまた読みたくなった。加藤氏によると「気分が良くて何が悪い?」というメッセージが作者から送られているという・・・
京都北山駅近くの本屋で文庫本を買う。そして昼飯に入ったタイ料理店のカウンター席で読み始めた。続きはピアノコンサートの開演前、休憩時間、そして帰りの電車の中。最後は就寝前のベッドの上で。その日のうちに読み通してしまった。
始めて読んだのが25歳の頃だから、三十年来、思い出しては読んでいる。僕は村上春樹や加藤氏の10歳ほど年下なので、『風の歌・・・』の舞台の時代(1970年)はまだ小学生。家にいた父の末弟の聴くベンチャーズの音楽は聴いたことがあるが、ほかにビーチ・ボーイズなどのポップ・ミュージックはあまり聴かなかったなあ・・・ どちらかというと歌謡曲系。フォークソングからポップになった吉田拓郎やミッシェル・ポルナレフなどのレコードを買ったりするのはたぶんもう少し後だ。そして、サイモン&ガーファンクルやビートルズの音楽にのめり込んで行く・・・
奈良の田舎町で育ち、大学時代は神戸の六甲あたりに下宿していたが、夜はあまり遊びに出ることもなかったので「ジェイズ・バー」の雰囲気は想像するしかない。港から病院や家々の明かりが見える、ってのは結構分かるんだけど。
『風の歌を聴け』を読むと、今から思うと全く女っ気のない寂しい下宿生活や、実家に帰ってからの年下の女の子の絡んだ遅い青春時代を思い出すね。僕にとってはそんな郷愁を呼ぶ村上作品です。
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