連休後半の最後で2度目の読了を果たした。最後は「もうこれで寝よう」とペースを速めて読み飛ばし気味になったが、一度目では気付かなかった表現のディテールなどが味わえた気がする。とくに後半最終部の「沙羅」とのやり取り、その前の「とりあえず片付けなくてはならないことも、私にはいくつかあるし」と彼女がいう伏線部分… フィンランドでの「クロ」と「つくる」との心の交流も好ましい。ハグしちゃったりするんだもの。もう二度と会う機会もないとお互いに思っているのだろうが…
あわせてYouTubeからダウンロードしたラザール・ベルマンのリスト作曲『巡礼の年』を通しで(といっても全部一度にというのはなかなか難しいが)聴いた。この「年」というのは原語では "années" (英語でも"years")と複数形だ。なるほど… ピアノ曲も色彩に満ちている。そしてベルマンの演奏は「耽美的」だそうだ。小説中、つくるはフィンランドでクロの持っているブレンデルの演奏も聴くのだが、これはまた機会があれば…
連休明けのテレビ・新聞で知ったのだが、村上春樹は5月6日に京都大学で行われた500人限定の公開インタビューの催しで人前に出たそうだ。その中でこの新作小説は「当初は短編のつもりで書き始めたが、人物描写を重ねるうちにこの長さになった」という趣旨のコメントをしたらしい。なるほど、そんな気がする。登場人物はそれほど多くないがひとりひとりの色合いが丁寧に描かれているのではないだろうか。ムラカミの新境地かもしれないなぁ、というのが二度読み終えての感想だ。
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