これは『海辺のカフカ』の翌年、2004年の出版。本棚から取り出して読み返したが、書きぶりがこれまでとはちょっと違う感じもする。
「あちら側」の世界と「こちら側」の世界の対比や交渉は長く村上小説のテーマとなってきたという気がするのだが、この小説ではTVセットの画面を通して、というヴィジュアルなあからさまな表現がされている。そしてカメラの位置が切り替わるように場面(小説の章)が切り替わってゆく。これって『1Q84』の前触れのようだ。
『海辺のカフカ』でも奇妙な(奇想天外と言った方が良いかもしれない)登場人物がたくさん出てきたが、『アフターダーク』ではいかにも都会の影で存在していそうな人物、そして深夜に活動する普通の人々が登場する。ラブホ従業員のコオロギさんが好ましい。彼女のしゃべる関西弁がたまらなく良い。本人は大変な境遇にあるのだが、読む方はほっこりするねぇ。村上春樹もやるやないかぁ。
主人公の一人、マリの(普通の、そしてちょっと背伸びする女の子の)表現も良いね。お姉さんの浅井エリとの対比において、語らずともより多くのことを読者に感じさせる。あとの「ふかえり 」のネーミングはたまたまなのかな?
さて、『1Q84』のあと、これから村上春樹はどこに行くんだろう。また翻訳に打ち込んだりしているのであろうか?
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